SAILIN' SHOES('72) / LITTLE FEAT
まだ彼らが日本であまり知られていなかった頃、まあ単に俺が知らなかっただけかもしれないが、73年頃か、このアルバムが輸入盤で入荷したのを殆ど中身も確かめず、衝動的にジャケ買いした。とにかくジャケットの良さは突出しているが、知らないアメリカンバンドかとそれ程の期待はしていなかった。しかし一曲目で大当たりを確信した。当時のアメリカンロックはレイドバックというよりは、ライトで勝手に言わせてもらえばフヌケものが多かったが、このバンドはドラムがドッシリとしたある意味ではツェッペリン等にも通ずるような重いリズムサウンドを持っていた。どちらかというとドローンとした雰囲気がアルバム全体を包んでいる感じはあるが、その中にあるトゲトゲしい程の激しさや、クールなヘヴィーさが完全に俺を魅惑してしまった。ローウェル・ジョージという名はフランク・ザッパ経由で知っている程度だったが、アーティストとしての質の高さには心底驚かされた。当時ブリティッシュ一本だった俺を再びアメリカに向けさせてくれたバンドでありアルバムである。
タイトルナンバーでもある「セイリン・シューズ」、「ウィリン」、「コールドコールドコールド」(この曲ドラムが目茶かっこいい!)と目を見張るナンバーがズラリと11曲。どの曲もグレイドの高い素晴らしい作品ばかりである。
ジャケットの話に戻るが、足がはえた真ん中からパックリ割れたケーキにでんでん虫が忍び寄るという、エロティックでアブノーマルでメルヘンチックなネオン・パークによる幻想的なジャケットは俺の知っている限り、上位にランクされる出来だ。
今でもよく聴くし、独特のグルーブ感と浮遊感に常に酔いしれてしまう、同じアーティストとして刺激を与えてくれる数少ないバンドである。
既に持っている人も多いだろうが、特にレコードで聴くといいと思う。特にジャケットはね。
AFTER THE RAIN('69) / MUDDY WATERS
今まで色んな中古レコード店に行ったり、ブルース専門店とやらで探していたが殆どお目にかからなかった。唯一高円寺のレコード屋にあったのだけれど、思ったよりいい値段でちょっと買うのをためらい、まあそんなに急ぐわけでもないのでその内に…と結局捜し始めて2年近くたった今やっと手に入れた。「待てば海路の日よりあり」の諺通り、嬉しくて嬉しくてしょうがない!
マディ・ウォータースは俺の師匠で、この人に勝るヴォーカリストはいないと思っている。彼のアルバムである限り良くないワケが無いのだが、この「アフター・ザ・レイン」と前年にリリースされた「エレクトリック・マッド」は発売当時非常に評判が悪かった。実は俺もその時はあまり好きにはなれなかった。が、こうして30年以上もたって改めて聴いてみると全く逆の評価になってしまった。凄くいい、たまらなくいい!オルタナブルースとでもいうか、マディのヴォーカルはブルースフィーリングは当然の事、ロックフィーリングもズバ抜けて凄い。そしてマディ独特のスライドギターも随所でギラギラヌルヌルとネックを滑りまくり、マイルス・デイヴィスとの競演もあるピート・コージーのハチャメチャなギターが爆発、これらに滅茶苦茶ファンキーでエキゾチックなベースが絡むのだからもう!!!
ジャケットもまた凄い。泥だらけの裸のマディがガマを鷲掴み、不気味というかエロチックというか、考えた方も考えた方だが、それをやっちまうマディはやっぱり俺の大先生。このアルバムを譲ってくれた渡部さん本当にありがとう、感謝感激で毎日聴きまくりですよ。何故これがCD化されないのか不思議でならないが、もうレコードを手に入れたからCDにならないほうがいいかな。因みに「エレクトリック・マッド」はCDで発売されています。
上手いと言われるヴォーカリストはゴマンといる。人の心を揺さぶるヴォーカリストもしかり。だけど納得させてしまうヴォーカリストはこの広い地球上でもそうザラにはいないだろう。俺の心の中には数人存在するが、マディ・ウォータースはその中でもNO.1。俺もいつかはこんなヴォーカリストになりたいと思う。
RUPI'S DANCE('04) / IAN ANDERSON
彼とはかれこれ30数年来のつき合いである。そうはいっても、友達でもなければ顔見知りというわけでもない。彼が作品を作り、俺がそれを聴くという単なるそれだけの間柄なのであるが。少し彼を説明するとジェスロ・タルというイギリスのロックグループの看板的存在、というかジェスロ・タル=イアン・アンダーソンといっても過言ではないだろう。
そんな彼のソロアルバムが久々に出たということで、早速購入した。もちろん期待はしていたけれど、実際耳にして期待以上の素晴らしさになんかとても幸せな気分になった。
これは同じ音楽家として聴いて刺激になる作品というよりは、単なるファンとして素直に聴けて、身の至る所に染み込んでくる音や雰囲気の優しさがたまらなく素敵だというのが、俺の気持ちを素直に表現しているな。
アルバム全体に漂うブリティッシュトラッドの香り、その中にジャズやクラシックのエッセンスがさり気なく散りばめられていて、この世のものとは思えない程美しいアコースティックサウンドである。音楽の枠を越えて、詩や童話、美しい森の田舎町を舞台にした芝居的なイメージがあったり、俺をひとときおとぎの世界に誘ってくれた気分にさせてくれた。アコースティックギター、竹笛やフルートのバランス、彼の囁くような優しい唄いっぷりが素晴らしい透明感をかもし出している。今時の数回聴いたら飽きてしまうような、大げさな割には中身のないものとは違い、聴くほどにその良さが発見できる味わい深い作品である。この深味は幼い頃から彼が耳にしてきたブリティッシュトラッド、クラシック、そしてブルース、ジャズがどっしりと体に根付いているからこそであろう。
ところで彼は片足を挙げてフルートを吹き、ちょっと曲芸じみたプレイをする人でも有名で、このアルバムジャケットもそのキャラクターを活かしたものになっている。傍らにちょこんといる黒猫が彼のアクションをマネているのか、何とも愛らしい姿である。
SONGS FOR A TAILOR('69) / JACK BRUCE
ジャック・ブルースといえばスーパーグループ、クリームのベーシストとしてあまりにも有名、多くの人がその名を耳にしたことがあると思う。特に俺達の世代ではエリック・クラプトンやジンジャー・ベイカーも凄かったけど、クリームはやはりジャック・ブルースがいたからね・・・そう思っている人も少なくないことだろう。勝手な俺の思いこみかも知れないが、本当に素晴らしいアーティストである。これは彼のソロデビューアルバム。当時今ほどに輸入盤が手に入らなくて、航空便は高いのだがそれでもやっと手に入れて聴いて、いきなり肩透かしをくらった思い出がある。クリームのイメージがあまりにも強烈だったせいか、ギンギンのロックサウンドを期待していた俺には、ちょっと理解し難い雰囲気があった。当時俺はブラス(管楽器)が入ったロックはあまり好きではなかったし、また何か地味に聴こえたのかもしれない。そのままよくあるように(笑)レコード棚に眠ってしまうことになるのだが、有ることがきっかけでこのアルバムが日の目を見る。クリームやこのアルバムのプロデューサー、フェリックス・パッパラルディが第2のクリームといわれるマウンテンを結成。彼はベースを弾き、プロデュースも手掛け、又、レズリー・ウェストという無名ではあるが凄いギタリストがいるという噂もあり、とにかく買って聴いてみた。クリームを聴いた時程の衝撃は無かったものの、噂通りのギターを聴かせるとてもいいバンドだった。その中に「テーマ フォア アン イマジナリーウェスタン」というジャック・ブルースの作品があり、それが滅茶苦茶かっこ良くてとてもお気に入りの一曲になった。そういえばこの曲は確かジャック・ブルースのソロアルバムに入っていたっけなぁ〜、と思い出し聴き比べてみた。ここでこのアルバムの素晴らしさにやっと気づくことになる。すり切れる程聴くこととなり、やっとCD化された時も即購入した。30年以上過ぎた今もなお色褪せる事無く、新鮮なものを発見することができる。曲、サウンド、独特のベースプレイ、そしてヴォーカル、どれも一級品、アルバムとしては確かに地味ではある、聴くほどに味わいが出てくる作品であろう。マウンテンの「イマジナリーウェスタン」との聴き比べもお薦めです。
PAST LIVES('03) / BLACK SABBATH
これはまだオジー・オズボーンが在籍していた1973年頃のライブを収めたもので、80年に発売されたものに(当人達は音質の問題などで発売には難色を示していた、レコード会社の思惑なども絡んで当時は妙な時期の発売となっている)、今回は2枚組として再発された、ディスク2はすべてライブのボーナストラックである。
メンバーが言うとおり確かに音はあまり良くないが、しかし内容は素晴らしい。ライブ盤にありがちな差し替えも無く、生のブラックサバスがこれでもかと堪能出来る。
オジー・オズボーン、トニー・アイオミ、ギーザー・バトラー、ビル・ヴォード、4人が吐き出す音、醸し出すムード、まさしく悪魔、奴らは間違いなく化け物だ。脂の乗りきった時期のものだけにどの曲も凄まじいけれど、ディスク2、メガロマニアはたまらない。10分という長丁場を忘れさせてしまう、これぞまさに怪演。世界中に彼らの影響を受けたバンド、ミュージシャンはいるが、分かるなぁその気持ち。しかしやっぱり絶対真似出来ない、ワンアンドオンリーなバンドである。
このライブの前に、例の今年出たレッド・ツェッペリン3枚組ライブ(CD,DVD)を聴いて、凄か〜と思ったけれど、個人的にはこっち、パストライブスの方がとんでもない!全くこの頃のサバスを観てみたかった。CDを聴きながら想像するに腰抜かすか、しょんべんちびるか、一体どんなことになって会場を出る羽目になったろうか想像してみた。そりゃ悲惨だろうね(笑)。メタリカあたりもガキの頃、相当聴きまくったんだろうなあ、そんな気がする。
2枚組でちょっと高いけれど、これは是非聴いてみて下さい。お皿の中に収まりきれない程の音が洪水のように溢れ出してくる、これぞライブ!
WHITE LIGHT WHITE HEAT('67) / THE VELVET UNDERGROUND
最初にこのアルバムを聴いた時は音は悪いしうるさいし只々単調で、まあ名前の通りアンダーグラウンドっぽかった。しかもレーベルが「VERVE」。当時は音が良いとか悪いとかもレコードの内容としてはかなりのポイントだったので、購入には随分迷った。だが黒地にドクロの透かしが入ったジャケットが気に入って手に入れた。買ったはいいがあまり聴かなかったし途中で針を上げることも多く、A面の「ザ・ギフト」くらいで何か疲れてしまったいた。その後、手に触れることも無く半年程たってたまたま聴いて突然ハマってしまう。特に「シスターレイ」にはドップリって感じ。18分にも及ぶ超大作?もあっと言う間の出来事のように聴いてしまう。何度も繰り返して聴いていたよ。バンド名はかっこいいけどねえ・・・くらいの印象だったのが、内容も申し分ない出来だ!に変わってしまった。
このアルバムはロック好きな人なら大抵聴いたことがあると思うし、無くても知っているだろうから特別内容には触れないが、まあ自分自身で一度は体験したいサウンドである。ストレートで雑なイメージはある、が、いろんなバンドやミュージシャンが彼らの影響を受けて取り入れてはいるが、結局それっぽくなっているだけで溢れ出るエネルギー、天然色でないケバケバしさや熱が感じられない。やはり彼らにしか作り得ない世界である。
このアルバムの他に数枚ライブを含めて出していて、どれも出来は良い。その中でもこれを選んだのはクールでヴァイオレンスで肉感的だったから、ということです。
ASK THE UNICORN('68) / ED ASKEW
俺はミュージシャンだけれど、別の意味では馬鹿が付くほどの音楽ファンで、いつ頃からこうなったのかは分からないが、自分の知らないモノや、新しいモノ、ちょっと変わったレコード、ジャケット、カッコいいミュージシャンなどを目にすると聴いてみたくてたまらなくなる。このアルバムは俺がSONHOUSEでブルースをやっていた頃のもので、その当時ブルースのレコードか、今で云うインディーズっぽい「ESP」レーベルから出ていたモノに興味を持っていた。そこからはファグス、ゴッズ、オクトパス、チャールズ・マンソン、などが出ていた。そんな中で特に気に入っていたのがこの、エド・アスキュー「アスク・ザ・ユニコーン」。街が燃えているようなモノクロ写真に、炎のような文字でED ASKEWと書いてある怪しげなジャケット、買わずにはいられなかったね。構成はマンドリンの弾き語りで今で云うアシッド・フォーク、全体的に暗く淡々としているので万人向けではなく、しかしハマっちゃうと抜け出せない可能性を秘めている。俺はそれ程ドップリというわけではないが、たまに聴きたくなってCD棚に手を伸ばしてしまう。1曲目「ファンシー・ザット」は、レッド・ツェッペリンの3枚目あたりに入っているトラディショナルフォークを取り入れたアコースティックナンバーに通じるものがある。ひょっとしたらジミー・ペイジがジェイク・ホルムズの「幻惑されて」(何故かジミー・ペイジの作品になっている)をカヴァーしたように、このエド・アスキューの「ファンシー・ザット」にも影響を受けたんではないかなぁと俺は勝手に思っている。
彼のプロフィールやその他のアルバムなど、そういったことは全く知らないのでこのテのものに詳しい人がいたら色々教えてください。多分これ一枚あれば事足りるって感じだと思うけどね。CDのジャケはLPとは違って幻想的でエロティックなカラージャケになっている。
万が一このCDを聴きたいと思った方は、京王線明大前駅すぐにある「モダーンミュージック」、ちょっとコアな音源が揃っているこちらで手に入ると思います。でもあくまでもサイフに余裕のある人向けね、一回聴いておシャカじゃ勿体ないしそれに割と高かったから。
想い出のトニー/赤木圭一郎
俺がまだロックに目覚めていなかった、石原裕次郎や小林旭の映画や彼らが唄う歌に憧れを抱いていた頃、同じ日活からバタ臭くて、何となく日本人離れしたムードを持った俳優がデビューした。まだ中学一年生くらいだったので、その魅力があまり良く理解できていなかったが、裕ちゃんや旭とはひと味違った不良っぽさなどは何となく感じていた。そしてまもなくして彼は21才という若さで散ってしまった。その名は赤木圭一郎、トニーというニックネームで呼ばれていた。どことなくトニー・カーチスに似ていたからそう呼ばれていたのかどうかは知らないが、彼には似合いのニックネームである。これはそんな彼のアルバム、赤木圭一郎のすべて、「思い出のトニー」というタイトルが付けられた2枚組。聴いているとなんだかとても切なくなってくる。それ程の熱狂的なファンでもなかったのに、裕ちゃんを聴くような、旭を聴くような、当時の思い出や、懐かしいとう感じとは全く違う男の優しさや、淋しさや、爆発するような若さや、その色々なものが入り交じってドーッと押し寄せてきて、改めて彼の映画を見直したりする。そうすると裕ちゃん、旭とは違った、古さを感じさせない魅力を感じてしまう。きっと若くして死んで、中年やそれ以上になってしまった彼を知ることが出来ないからそう思えるのかも知れないが、すべてが初々しく見え、聴こえてくる。上手くはないが、いや、こういうのを上手いというのかも知れない。ありきたりの言い方をすれば、ハートがあると・・・。いやこれも違うな、なんだろう、短い時間の中にそう、数年間の中に数十年をブチ込んでしまったような強烈なパワーがある。また彼はよく、ジェームス・ディーンと比較(?)されたりする。和製ジェームス・ディーンと呼ばれていたこともあった。車の事故でこの世を去った共通点はあるものの、俺に言わせれば、赤木圭一郎の方が数段カッコいいと思っている。昭和34年4月から36年2月迄の約2年間、短い期間をイナズマのように走り抜けていった、その凝縮されたエネルギーが淡々とした彼の歌の中に重々しくワイルドに込められている。それは彼の映画での不器用に見える演技にも現れているような気がする。「霧笛が俺を呼んでいる」「黒い霧の町」「追憶(おもいで)」、戦前の歌謡曲のカヴァー「流転」等地味ではあるがいい曲を残している。彼の映画のタイトル、「電光石火の男」を地でいった唯一無二の素晴らしい魅力、個性、ムード、そのすべてを持ち合わせた男である。
BLUE COUNTRY HEART('02) / JORMA KAUKONEN
珍しく新譜を紹介します。知らない人の為に一言。ヨーマ・コウコネンはジェファーソン・エアプレインの名ギタリスト。エレクトリック・プルーンズなど多くのグループやミュージシャンとセッションをして、ホット・ツナを結成(このデビューアルバムも素晴らしい)。現在は一人で気ままにやってるんでしょうか、情報が少ない為あまり良く知らない。
このアルバムはブルーグラスのミュージシャンと一緒に、リラックスした中にも緊張感を漂わせながらプレイした作品。全てカントリーやブルースの名曲のカヴァーで何気なく買って聴いてびっくり!俺はここ数年カントリーを聴き始めたヒヨっ子なので、実のところ奥の奥までは良く解らないとこもあるんだけど、とにかく凄いショックを受けてしまった。カッコイイ!!!
俺なんか逆立ちしてもこんなことは一生出来ないだろうと、それ位身体の中に染み込んだものがストレートに表現されている。耳から毛穴から内蔵の奥底までビンビン伝わってくる。ながながと美辞麗句を連ねてみてもこの感動とアルバムの良さは伝わらないかな。今のところこのアルバムを手に入れて数日だが、かなりの回数聴き込んでいる。続けて何度もかけてみたり、そしてこれを書いている今も鳴らしています。もし聴いてみた人がいたら、是非感想を知りたいなア〜。好き嫌いはあるだろうけどね!
GLAM ROCK (VIDEO) / GARY GLITTER, SLADE, WIZZARD, and more!
ゲイリー・グリッター、グラムロックの中でも飛びきりのキワモノ、その以前はイギリスのプレスリーとかなんとか言われていた人で、見るからにケバイ。彼はグリッターブギなるものを創り出した人で(本当の所はどうなのか俺は知らない、世間でそう言われているからそうなのでしょう)、スージー・クワトロのキャン・ザ・キャン等のリズムもそう。地面にクイを打ち込むような独特のビート感で、イギリス特有のもの。アメリカでは聴いたことが無い、まあマリリン・マンソンのブギは多少近いところがあるかも知れないけど。「ロックンロールパート2」とか「〃パート3」だとか、殆ど同じものの焼き直しみたいなものを出したり、オールディーズのカヴァーとか、他人のヒット曲のカヴァーが多いんだけど、何故か妙にとんでもなく存在感がある人である。とにかく必ず映像を観て欲しい。今回紹介しているビデオはシリーズがいくつかあるようなので、クレジットを確かめてこの「ロックンロールパート2」が入っているものを。彼のアクション、ファッションもさることながら、バックのギタリストがアクションする度にストラップが外れて、直す、外れる、直す、また・・・って撮り直せば良かったのにと思うが、そのまま入っているのもスゴイ。本人までどうしてもロンドンブーツのふくらはぎがゆるくてずり落ちてしまう、唄いながら直す、落ちる、直す・・・、そのまま入っています。デヴィット・ボウイやマーク・ボランなんか女子供のおもちゃって感じで全くかすんでしまう程、イカサマの存在感をギラギラと発揮している。彼は万人のおもちゃ、本当の意味でこれぞグラムロッカーと言える人でしょう。
EIGHT GIGS A WEEK / THE SPENCER DAVIS GROUP
ピート・ヨークのドラムとマフ・ウィンウッド(スティーヴの兄)のベースが創り出すどっしりと重いリズム、当時黒人よりも黒いサウンドと評判が高かったこのグループ。看板でもある若干17才のスティーヴ・ウィンウッドのレイ・チャールズ完全コピーのヴォーカルは右に出る者がいないといわれた程である。エリック・バードンやヴァン・モリソンのリズム・アンド・ブルースフィーリングとは違ったハイトーンで畳み掛けてくるスタイルはしかし、彼らと双璧とまでいわれる程の存在だった。ヒット曲も数多くギミ・サム・ラヴィン、キープ・オン・ランニング、サムヴァディ・ヘルプ・ミー、ウェン・アイ・カム・ホーム、アイム・ア・マンなどが特に有名だが、俺は個人的にハイ・タイム・ベイビーやマイ・ベイビーあたりの方が好き。俺は大きな影響を受け、彼らのナンバーを数多くレパートリーに取り入れていた。スティーヴ・ウィンウッドの泣き節に触れてみたい人には、レイ・チャールズそっくりワールドにどっぷり浸かったジョージア・オン・マイ・マインド、パーシー・スレッジの大ヒット曲ウェン・ア・マン・ラヴズ・ア・ウーマン、ジミー・コックスのノーヴァディ・ノウズ・ユー・ウェン・ユア・ダウン・アンド・アウトなどがいいかな。後にスティーヴが結成するトラフィックの方がブリティッシュトラディショナル等のルーツを取り込み独自の世界をつくりあげている。このスペンサー・デイヴィス・グループは黒人音楽への傾倒の深さが見事な程浮き彫りにされたバンドである。リーダーのスペンサー・デイヴィスの存在が見えないという不思議さはあるが、まあ昔のバンドにはよくあることか。
かなり昔にかまやつひろしさんに会った時、スペンサー・デイヴィス・グループが好きだという話しをしたら、次にかまやつさんがロンドンで彼らに会ったときの写真をプレゼントしてくれた。ついでに載せときます。
THE BEST OF TONY JOE WHITE / TONY JOE WHITE
ホワイトブルースの波にも乗ってスワンプロックなるものが60年代後期に日本に入ってきた。その代表格とも言えるのがこのトニー・ジョー・ホワイト。シンプルなドラムとベースのゴキゲンなビートに乗って沸々と熱く煮えたぎるようでいて、どこかクールなグッと押さえたヴォーカルが非常に男っぽくてセクシー。彼の代表作でありスワンプロック、いやロックのスタンダードと言えるポーク・サラダ・アニーは語りと彼独特のファンキーフェイクを織り交ぜながらちょっとルーズでドスが効いた唄いっぷりがカントリージェントルマンって感じで見事。まあ、日本人では絶対真似できない世界を作りだしています。キングオブロックンロール、エルビス・プレスリーもこのナンバーをカヴァーしているが、やはり本家本元にはかなわない、プレスリーと言えども脱帽って感じだね。
割と良く似た曲が多いし、アクも強いので誰にでも受け入れられる訳にはいかないが、一度ハマってしまうととことん快感。他にもソウル・フランシスコ、ルーズヴェルト・アンド・アイラリー、バラードのこれもロックのスタンダードになっているレイニー・ナイト・イン・ジョージアと素敵なナンバーがたくさん詰まっているこのベストが初心者にはお勧め。
顔がプレスリーにちょっと似ているところから、スワンプ界のエルビスなんて宣伝文句で言われたこともあったが、日本では数少ない熱狂的なファンが一部いる程度で、パッとした成功は収められなかった。本国アメリカ、イギリス、ヨーロッパでは多くのファンがいるらしいけど、日本ではこうゆうのはやっぱりダメなのかな・・・、ちょっと淋しい気がするけどね。
FOR YOUR PLEASURE ('73) / ROXY MUSIC
これはロキシーミュージックのセカンドアルバム。ファーストの、まるでハリウッド映画のワンシーンを思わせるような踊子がベッドに寝そべっているジャケットがなかなかグラマラスで良かったけれど、このジャケットも凄い。マンハッタン(?)の夜景をバックにアマンダ・レアが黒豹とアメ車、お抱え運転手(ブライアン・フェリー)を従えてのカット。このアマンダ・レアはサルバドール・ダリの愛人と云われたニューハーフで(本当の女性説もある)、「クィーン・オブ・チャイナタウン」のヒットがある。ファーストのイメージがマリリン・モンローなら、セカンドはグレタ・ガルボか・・・。
1〜5曲までクリス・トーマスとロキシー、6〜8曲がジョン・アンソニーとロキシーの共同プロデュース、前半は多少ポップな仕上がりで後半はプログレ色が強い。ロキシーの中で一番好きなアルバムで、中でも等身大のビニール人形(ダッチワイフ?)を愛する男の破滅を歌った「In every dream home a heartache」や、アルバムタイトル「For your pleasure」、ロキシーのライヴでは「Re-make/Re-model」と共に欠かせない「Do the strand」が素晴らしい。デビュー当時はビジュアル重視のバンドで演奏力も低く、あまり評価が高くなかったが、俺は他に類を見ない楽曲とサウンドは今も見事だと思っている。又、ブライアン・フェリーの鼻から抜ける感じのどことなくフランス訛りのような歌い方は、俺には真似できないが素晴らしい個性だと思うし、サウンドによく合っている。クレジットにヴォーカルではなく、ヴォイスと書かれているのもイメージがよく伝わる。
ブライアン・イーノがこのアルバムを最後に脱退したことをとても残念に思うが、反面その後、斬新でキッチュで、ポップ色を強く打ち出していくロキシーにとっては良かったのかも知れない。
HOT&NASTY THE BEST OF BLACK OAK ARKANSAS / BLACK OAK ARKANSAS
出逢いは俺が25,6の頃だったと思う。長髪の男が大木を斧でブった切っているジャケット(だったかな?)を見かけて、あまりのインパクト、カッコ悪さが妙に気にかかって面白半分で試聴し、その時はこれといって個性のないアメリカン・ハード・ロックだと思った。彼らとの付き合いは只それだけで終わってしまったんだけど、7,8年前にタワーレコードで運悪く再会してしまった。ま、これも縁かと購入して聴き直してみたら、やっぱり変だった・・・。
骨太でゴツゴツしたサウンド、シンプルだけどアカ抜けのしない曲。特にヴォーカルのアクの強さ、オマケに名前は「ジム・ダンディ・マグナム(!)」ときた、このルックスでダンディだってよ、その上マグナムまで付いちゃって〜!!!品の無いベターっと貼り付くような歌い方、どうも俺の趣味には合わないなーと思いつつも、なんか妙に耳から離れなくなってきた。何度も聴いているうちに、結構いい曲に思えてくるからこれまた不思議。「Lord have mercy on my soul」「Son of a gun」なんてナカナカの名曲だ。「Fever in my mind」はガンズ・アンド・ローゼスのパラダイスシティに似ているし。そういえばアクセル・ローズ、デヴィッド・リー・ロスらは彼らのファンらしいよ。デヴィッド・リー・ロスのあの下品さは、充分ジム・ダンディ・マグナムに通じるし、ダブル・アクセル・ローズって名前、発想も近い感じ、唄い方も似ている。小遣いに余裕があったら聴いてみるといい。ザ・バーズの「Rock'n'roll star」、ビートルズの「Taxman」もライブで取り上げていて、なかなかの熱演を披露しています。
加えて、どうもこのヴォーカル、唄い回しが桑田佳祐にも似ているんだがなあ〜。
THE TOP TEN HITS / ELVIS PRESLEY
エルビス・プレスリーの存在を知ったのは俺が中学生の頃で、ロクに勉強もせずに毎晩不良仲間と遊び回っていた時期だ。たまたま見に行ったのがプレスリーの映画で、タイトルは忘れたけれどその中で流れていた曲が「Hound Dog 」だった。当時曲のタイトルは分からなかったが、たまたま溜まり場にしていた店のジュークボックスから流れていたのがその曲だったのでタイトルを知った。その後先輩に教わっていろんな曲を知るようになった。「Heartbreak Hotel」「JailHouse Rock」「One night」「A Big Hunk O'Love」「Little Sister」等々、書き出したらキリがないほどだ。もちろん映画もよく見に行くようになったし、次回を楽しみにしたり、見逃したモノは小さな映画館でという風に全くプレスリー漬けといって良いほどであった。すべての映画が面白かったし、流れる曲にもシビれた。唄いたいとか、覚えたいとかは無かったが、なんとなくメロディを口ずさむ事はあった。シングル盤をポータブル電蓄で何度も何度も聴いては、映画の中でのアクションを真似してみたり、知らず知らずのうちに歌詞を覚えてしまう位だった。でもオヤジやオフクロなんかはうるさいから止めろ、そんなもんばっかり聴きよったら不良になるゾ、といわれたり(しかし、もうその時は十分不良だった・・・笑)。思い出すととても懐かしい。
その後ヤードバーズやアニマルズなんかが出てきて、プレスリーの存在が薄くなり、当時ヒットした「In the Ghetto」「Suspicious minds」はあんまりピンと来なかった。そして頭の中から消えかかっていた頃、一時期リタイアしていたプレスリーが突然カムバックしてきた。ヒラヒラと鋲が付いた白いジャンプスーツで、世間はワーワーキャーキャー盛り上がっていたが、俺にとってはなんかイメージが違い、どうしても入り込めないものがあって、映画「エルビス・オン・ステージ」も見に行くことが無かった。
その後もイギリス、アメリカのバンドやシンガーのカヴァーを聴いても、あープレスリーの曲かぁーってな具合で聞き流していた。ところが3,4年前になるか、ドワイト・ヨーカムというカントリーシンガーが「Suspicious minds」をカヴァーしているのに出会って、何か引っ掛かるモノがあった。もう何年もしまい込んでいたCDを引っぱり出してきて聴いてみると、この曲こんなに良かったっけ?と思うほど素晴らしくてそれから又聴くようになった。当然初期の方がどうしても多く聴くけど、後期のナンバーの良さも解るようになってきた。好きな曲はもちろん全ての曲、と答えるだろうけど敢えてあげるなら、「A fool such as I」「One Night」「A big hunk O' love」かな。トニー・ジョー・ホワイトのナンバーである「Polk Salad Annie」のプレスリー・ヴァージョンもいいね。
BLACK SABBATH ('70) / BLACK SABBATH
彼らの存在を知ったのは、イギリスのミュージックペーパー、そしてミュージックライフだった。やたら人相が悪く、どこから見てもまともじゃないその雰囲気は俺に興味を持たせるに充分なものだった。約4000円と効果だったが運良く輸入盤を手に入れることが出来た。アルバムは見開きジャケットで、初冬の風景、古い屋敷にドローンと澱んだ沼、枯れ大木に一羽のカラス、黒ずくめの青白い顔をした魔女、といったシチュエーションの絵がこれから始まろうとするブラックサバスの世界をますます膨らませてくれる。針を落とすと、雨音、雷、教会の鐘のような効果音に続いて、これ迄聴いたことのない様な爆音ギターが飛び込んできた。ドッシリとした重いリズム、ゆっくりとしたスピードで俺の心臓にドスを効かせてくる。あまりのヘヴィさに戸惑いながらも、いつしか彼らの世界に引きずり込まれ、瞬きすら忘れ、息もできなくなるような始末だった。ひたすらデカイだけじゃない存在感のあるサウンド、見事なテクニック、野太く伸びのある高音を持つヴォーカル、どれをとっても一級品である。
当時ヘヴィロックといえば、アメリカのアイアンバタフライが代名詞みたいになっていたが、なんのなんのこのブラックサバスにかかれば足元にも及ばない、植木等風にいうならオヨビデナイ!って感じ。加えて以外にポップな面もある。今改めて聴くとブリティッシュトラディショナルの影響も多分にあり、ギターのトニー・アイオミが僅かな期間ながらジェスロ・タルに在籍していた関係か、サウンドは全く違うがジェスロ・タルのイメージが端々に見え隠れしている。イギリス特有の冷たさと影みたいなものが、この並はずれたヘヴィサウンドの中にうまく活かされていて、彼らにしか作り出せない独特でファンタスティックなサウンドが王者の風格をも供えて溢れ出してくる。スラッシュメタルやハードコアメタルのアーティストの殆どがブラックサバスの影響を受けているといっても間違いないだろう。レッチリ、メタリカ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、マリリン・マンソン、モンスターマグネット書き出したらキリがないほどである。もちろん俺も未だにレッド・ツェッペリンと同じくらい尊敬もしてるし、ある意味ではライバルでもあるし、アイドルでもある。このデビューアルバム以降6枚目の「サボタージュ」までまるで獣のようにうねり続け、どのアルバムも素晴らしい世界を披露してくれる。ブラック・サバスのヘヴィなサウンドはあれから数十年たった今でも誰にも打ち破ることが出来ないし、このブ厚い鉛の玉を飲み込んだようなサウンドは永遠に不滅だろう。まさにヘヴィロックのキング、魔王である。

余談だが、もし手元に莫大な資金でもあったら、イギリスからオジー・オズボーン、アメリカからアリス・クーパーを呼んで俺を含めた3組の大イベントでもやらかしたいね。これぞキクフェスト!???
TRAFFIC ('68) / TRAFFIC
俺がまだKEITHというバンドをやっていた頃、毎日のように聴いていたグループがある。それは SPENCER DAVIS GROUP 。黒っぽさが売り物のイギリスのバンドだったが、とりわけヴォーカルの STEVE WINWOOD に熱中していた。若干16才の少年が RAY CHARLES ばりに、いや黒人のように唄うというのでその名が知れ渡っていた。その WINWOOD が SPENCER DAVIS GROUP を脱退して TRAFFIC を結成したとミュージックライフの情報で知った。どんなバンドかとやきもきしながら色んな想像をしているうちに、アルバムが入荷してきた。なんだか地味なメンバーの写真がジャケットで、WINWOOD 以外知らない奴ばかり。まあ WINWOOD が中心ならきっと悪くはないだろう。聴いてはみたいが輸入盤でビニール密封じゃ試聴も出来ないし、しかも値段が高い。国内版が出るのを待ちたいが、やっぱり誰よりも先に聴きたい。色々迷った末に何とか手に入れてワクワクしながら家に持ち帰り、レコードに針を落とした。
SPENCER DAVIS GROUP の頃のイメージもカケラも無い。力強くもなければ黒っぽさも無く、かといってポップな感じでもない。正直良いのか悪いのかさっぱり解らない、これといったポイントが見あたらないのである。これじゃなんか損した気分だ。折角高い金出して買ったのに、最後まで聴く気になれずレコード棚の中に押し込んでしまった。その時からどれだけたったか。ある時思い出したように引っぱり出して聴いてみた。半分 BGM 的にぼんやり聴いていると何かピクピクッと引っかかってくるものがある。何だろうこの感覚は。神秘的でサイケデリックなこの音は。WINWOOD のヴォーカルも黒人的というよりは彼自身のソウルを感じさせる。それに DAVE MASON の作る曲もかっこいい。それまでには無かったロックのイメージがこの中には詰まっていて、大人っぽさを感じる。一人で感心しながらこの時を境に極端にも毎日毎日聴きだした。挙げ句の果てには数曲が俺達のバンドのレパートリーにもなってしまった。
本作はいわゆる通好み、奥が深くて聴けば聴くほど味が出る、そんなアルバムだ。
LOVE IT TO DEATH ('71) / ALICE COOPER
世界中がグラムロック一色になっていた頃、偶然レコード店で見つけた一枚。モノクロだがケバケバしい衣装でポーズをとっている、ならず者のような暴力的な雰囲気が漂っていた。DAVID BOWIE や MARC BOLAN のような中性的な魅力や、メルヘンな感じは一切無く、タイトルも LOVE IT TO DEATH と当時ではショッキングなものだった(のち国内盤は EIGHTEEN というタイトルで発売された)。ALICE COOPER か・・・、AL COOPER なら知ってるけど、ALICE は知らないねえ〜。でも何か面白そうな気がして、これまた高価な輸入盤、清水の舞台から飛び降りる覚悟で購入。しかしこれがとても面白い。サウンドはザラザラとした粗めの骨太、イギリスのグラムロックがナンパで女の子を夢見心地にさせるなら、これは女を腕ずくでモノにする感じ、あるいは悪い遊技に引きずり込む、そんな感じかな。
CAUGHT IN A DREAM、夢の虜か、タイトルがいいねえ。もちろん曲も。そのうちカヴァーしたいと思っている。それに EIGHTEEN もいい、BLACK JUJU も。どことなく芝居がかったような曲作りになっていて、ちょっと不気味でウエストサイド物語風にいうなら悪役の不良集団のように飛び出しナイフをチラつかせて、真夜中のコンクリートジャングルを彷徨い歩く、そういう感じだね。それまでは悪のイメージは ROLLING STONES で決まりだったけど、こいつらは悪ガキというよりはさらに犯罪者的、育ちが悪そうで品が無い。イギリスとアメリカの違いもあるだろうが、そこが良かった。当時国内盤が発売された時のコピーはグラムロックではなく、ショックロックと書かれていた。
しかしこのテのキワモノは一発で終わってしまうものなんだけど、このアルバムの後次々と大ヒットを連発しグラムロック以上のセンセーションを巻き起こしていく。音楽性も確かでヴォーカルも一級品、ステージで大蛇をつかったりギロチンショウなど演劇を交えたり、それはそれは面白いライヴである。俺が彼らのステージを観たのは10数年前でもう峠を過ぎてはいたが、良い意味で全く変わらない素敵な B級ショウを披露してくれた。このアルバム以外にも良い作品が何枚もあるけれど、とりあえず俺が彼らを知ることになった記念のアルバムが本作で、今聴いても新鮮な気持ちで楽しめる。
又、GUITAR の MICHAEL BRUCE ってヤツがいいんだね。彼、今は何やってんだろう、まだ生きてるかな・・・?
ANTHOLOGY / FRANKIE VALLI & THE 4 SEASONS
彼らの存在を知ったのは俺が中学生の頃だった。毎日遊びほうけ悪友や先輩とつるんでいかがわしい場所に出入りしていて、そこのジュークボックスでよく流れていたのは「SHERRY」という曲だった。日本でも九重ユミコとパラダイスキングが和訳でやっていたけれど、当時はその両パターンが様々な所で流れていたように記憶する。カン高いファルセットのような声で綺麗なハーモニー、ビートが効いたリズム、今でこそ色々と解説が出来るけど、まだガキだった俺はお洒落で不良っぽい音楽に思えた。レコードは購入しなかったが、ジュークボックスにコインを入れてはPRESLEYなんかの曲と一緒に選曲していた。このグループはリードヴォーカルのFRANKIE VALLIのロックンロールばりのシャウトと中性的な声、美しいハーモニーが売り。それにポップなメロディラインとメリハリの効いたリズムが入り交じって、それはファンタスティックな世界を醸し出していた。こうして今聴いていると爽やかなソフトロック、ポップに聞こえるが、あの頃は薄暗い場所で流れていても何の違和感もなく、すごくカッコよかった。
その他にもいい曲はたくさんあるが、「RAG DOLL」は後に俺がSON HOUSE をやるようになってオリジナルのいろんな詩を書く中で「夢見るボロ人形」を作るキッカケになった曲でもある。曲や詩の内容は全く違うものだけど、50年代、60年代のイメージはよく出ているように思う。「SILENCE IS GOLDEN」は後に TREMELOES がカヴァーしたし、「CAN'T TAKE MY EYES OFF YOU」はディスコソングとして BOYS TOWN GANG が大ヒットさせた。個人的にはガキの頃の想い出もあってかデビュー当時のナンバーが好きなんだけど、いずれにしても今日本で流行っているゴスペラーズやその他の甘さだけが全面に押し出された、神秘性もへったくれも無いようなマガイモンとはモノが違うと赤裸々に見せつけてくれる。
FRANKIE VALLI & THE 4 SEASONS のCD はかなりあるけれど、意外に「RAG DOLL」が抜けているのがあるので、買う時にはよく確かめて。なんと云ってもこの曲は絶対はずせない。
LED ZEPPELIN T ('69) / LED ZEPPELIN
俺がKIETH で唄っていた頃、時期としてはもう後期だけどレコードデビューする前のLED ZEPPELIN がミュージックライフのページを賑わせていた。ルックスは滅茶苦茶カッコいいし、エピックから出ていたYARDBIRDS のライヴにしびれまくっていた時期だったので、特にLED ZEPPELIN のデビューアルバムは心待ちにしていた。
針を落として「GOOD TIMES BAD TIMES」が飛び出してきて大ショック!ライヴYARDBIRDS がブッ飛んだ。すごく攻撃的でヘヴィでセクシー。初めて耳にするタイプのドラム、ハイトーンのヴォーカル、荒々しいギター、動物のようなベース。当時名前が売れていたのはJIMMY PAGE 位のもので、しかしその瞬間から俺の中では4人共スターになってしまった。今思えばライヴYARDBIRDS も同じくらい素晴らしいのだけれど、あの時のショックはもう喩える言葉すら浮かばなかった。ブルースを基本にした曲作り、その中にはフォークや民族音楽の匂い、即興音楽的な手法が至る所に散りばめられていて、名札かわりの一枚って感じがピッタリのアルバムだね。これがZEPPELIN だってモノがもったいぶらずにドカーンと詰まっていて、もう誰も追従出来ないなという感じがした。JEFF BECK がその後すぐに同じようなスタイルのものを発表したが、まあまあ程度だった。俺達も「COMMUNICATION BREAKDOWN」や「I CAN'T QUIT YOU BABY」「YOU SHOOK ME」等レパートリーに入れてみたものの、果たしてどうだったか。
その後強力なアルバムを次々と発表、そのどれもが群を抜いた素晴らしさで、すべてのアルバムが大好きである。時代の先端を走っていたというより(もちろんそうであったが)センスの良さと幅広い音楽性、いとも簡単にサラッとやってのける、それでいて誰も真似が出来ないZEPPELIN サウンドを作り上げていった。これぞバンド、このメンバーでなければ決してあり得なかったサウンドを余すところ無く聴かせてくれる。このアルバムはそういったものの土台となった作品である。不運にもサウンドの要であったJOHN BONHAM が '80年にこの世を去り、そこでZEPPELIN も終わった。
そういえば当時俺はとことんミーハーになってROBERT PLANT のステージでのたたずまいや髪型、ファッションを真似しまくっていた。ステージ写真でROBERT PLANT を真似た自分の姿に見惚れていたアホな時代でもあった。

菊の華