ZHIVAGO('04) / JUDE
JUDEのライブを初めて観たのは渋谷タワーレコードだった。その頃池畑がドラムを叩いていたので気楽に足を運んだ。当日は決して最良なセットではなかったと思うが、何故か非常に集中して最後まで見届けた。その時の正直な感想は良いとか悪いというより、とにかくショックだった。
その後機会がある度、彼らのライブを観に行った。何度行ってもラストまで席を立たず、いつもジェラシーとエネルギーが沸々とわき上がる気分にさせられた。ベンジーのヴォーカル、ギター、そして佇まい、すべてがカッコイイ。ベースの渡辺もパワフルでワイルド。ドラムは池畑から椎野、そしてこのアルバムから22才の城戸紘志になった、俺はまだこのセットでのライブは未体験なので楽しみにしている。
この4作目のアルバムを聴いて、やはり彼らに対する俺のイメージは変わらない。イギリスではない、ヨーロッパのイメージを強く感じる。似ているわけではないが、60年代ベルギーのインストゥルメンタルバンド、ジョーカーズを思い出す。繊細でエキゾチックなバイオレンス、そしておとぎ話の世界が垣間見える。詩の世界が広がってサウンドが出来上がってゆく、というのがとても素晴らしい。これは俺の理想でもある。
最近日本ではなかなか好きなバンドが無いのだが、花田といいこのJUDEといい素晴らしい作品が生まれている。俺もうかうかしていられないと同時に、こんな連中がいることがとても嬉しい。

問:SexyStones.com
NOWADAYS('04) /花田裕之
このアルバムを聴いていると、なんかすごく落ち着いたいい気分になる。
癒し系とか云った類のイカサマものとは全く違う。ゆったりとした気分で、自分の好きなことを聴く人に押しつけるでもなく、かといって拒絶するでもない。花田というギタリストでありシンガーである人間の身体、心に、血となり肉となり骨となって蓄えられた音楽が静かにそして鮮やかに花開いた作品である。ブルース、ロックンロール、フォークそしてカントリーのエネルギーがストレートに吐き出されており、爽快だ。60年代後半から70年代前半あたりのスワンプロックの匂いを漂わせつつ、当時の雰囲気だけを薄っぺらにマネたつまらないコピーものとは一線を画する。確実に今の音である。
メンバーはVo,G 花田裕之、 Ba 井上富雄、 Ds 椎野恭一と気のあったメンツながら適度な緊張感が心地よい。こういうノリって、なかなか出せるもんじゃないんだよね、重ねた年齢もあるだろうが、やはり各個人の音楽への思いや姿勢などが大きく影響していると思われる。
これら、とても重要なことなのです。
ルースターズファンにもお薦めしたい。確実に前進しているミュージシャン花田裕之の今の姿をこのアルバムで感じ取って欲しい。ルースターズとは全く別の、しかし一貫した花田の音を感じ取れるはずだ。こういった音楽を作り出すことを羨ましく思うし、刺激にもなる。小手先だけの使い捨て音楽にはうんざりだし、俺には必要ない。
こんな作品と出会えてよかった、みなさんも是非聴いてください。

問:http://www.irc2.co.jp/hanada/
POWER PLANT('67) / GOLDEN DAWN
テキサス州オースチン出身、アレイスター・クロウリーも参入した魔術結社「黄金の夜明け」に由来するバンド名。ヴォーカルのジョージ・キニーは幼なじみのロッキー・エリクスン(13thFLOOR ELEVATORS)とガレージバンドを組んだ後に、高校時代の友人に誘われてこのバンドに参加した。サウンドはブリティッシュロックの雰囲気を多少持ちながら、ベルベットアンダーグランドやテレビジョン等にも通じる。最初に聴いた時は1曲目のEVOLUTIONを覆う金属か硝子の暖簾のような効果音がいやに耳についてうっとうしさを感じたが、そのうち心地よいという中毒現象に陥ってしまった(笑)。ジョージ・キニーの甲高い針金のようなヴォーカルはテレビジョンのトム・ヴァーラインやリチャード・ヘル風で(彼らがキニーに似ていると言った方が正しい)、サディスティックでヒステリックなイメージがGOLDEN DAWNのサウンドに実に良くマッチしていて、ストーンズやキンクス、ゼムの流れを汲むスタイルを完璧に自分たちのものにしている。聴いていると俺が10代後半に受けたロックの洗礼を改めて体験しているという、少し忘れかけていたものを呼び起こしてくれる。当時俺の知らないところでこんなバンドが数多く活動していたのかと思うと、嬉しい反面もっと早く出会いたかったと複雑な気持ちになってしまう。店頭でこのCDを見かけたら絶対手に入れるべきだ、間違いなく損のない内容の作品だからね。
ロッキー・エリクスン率いる13thFLOOR ELEVATORSも好きだが、個人的にこのGOLDEN DAWNの方が俺にはビシビシくるものがある。Zi:LiE-YA のライブで、楽器のセッティングの間にいろんな音楽を流しているが、このバンドはよくかけているので実は耳にしている人も多いかも。
こんな凄い素敵なバンドがメジャーにならなかったなんて全く信じられない。重ね重ね、絶対お薦めのアルバムです。
THE SPOILS OF WAR('68〜'70) / THE SPOILS OF WAR
ドイツのSHADOKSというレーベルから1960年後半から70年代前半の、あまり、というか殆ど日の目を見なかったバンド達のコンピレーションアルバムを聴いてみたらかなり面白かった。このTHE SPOILS OF WARもその中の一つで、キュウリかナスのロボットみたいなのが人間を襲っているジャケットはどう見ても中身を期待させないが、収録されていた「RIT YELLOW OF THE SUN」には非常に惹かれた。是非アルバムを通して聴いてみたくなり、よくあるその一曲だけいいのかも、と多少不安だったが早速CDを注文した。
古い三流SF映画のポスターのようなジャケットはよく見れば面白い、レコードならなおさらだろう。しかしなんといっても中身の良さには驚いた。イリノイ州出身のバンドでジェームス・クオモがリーダー格のようだ。サウンドは当時アメリカで主流だった初期のブラッド・スウェット&ティアーズにサイケデリックな味付けをしたプログレッシブロックな感じ。全体的にフワフワしたキーボードサウンドで、ジャケのイメージ同様、空飛ぶ円盤地球に接近!なんてサントラ風でもある。最新のエレクトロニクスを駆使した今時の無機質なものと違って、シンセサイザーを使っていてもどこかほのぼのしていて夢があるというか体温を感じる。もしリアルタイムで聴いていたら、???だったろうが今聴くと手作りな感覚がかえって斬新。当時のヨーロッパプログレともひと味違うし、それらより多少アヴァンギャルドな感じも強いが、それでいてポップな作りだ。ジェームス・クオモはその後フランスに渡り、「MORMOS(モルモ)」を結成、こちらは60年代イギリスのアコースティックサイケ集団「THE INCREDIBLE STRING BAND」にも通じるサウンドでもあるので、彼の中にはアメリカにいた頃からヨーロッパ的な趣向があったのかも知れない。最近のSFX映画や冷めたコンピューターミュージックなどが今ひとつ楽しめない人には、この人力特撮風ポップロックミュージック?はお勧めかも。入手しにくいかも知れないが、通販などで是非探してみてください。

菊の華